「桐島、部活やめるってよ」
2012年 08月 24日
第22回小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウの原作小説の映画化。監督は吉田大八。
高校生の日常をリアルに描いた作品。青春ものですが、爽やかなものではなく悶々としたところがとても良かったです。
特に神木隆之介演じる映画オタクとその仲間たちがステキ。なんせ高校生で映画秘宝が愛読書、「鉄男」の映画まで見に行くし、ゾンビに対して熱く語るという立派なオタク。そんな彼が勝手に惚れてしまった彼女が実は彼氏持ちと分かったときのあの衝撃はたまらないものがあります・・・
そして勝手気ままなバレー部員たち(まあ彼らにも事情があるんですが・・・)に対して、こいつら全員食い殺せ!と撮影するところが燃えます。もちろん妄想ですが、ゾンビが部員を食い殺し(ロメロみたいに)惚れていた女の子も血みどろに・・・しかもそれが吹奏楽部の演奏にマッチして凄くカタルシスがありました。この部分は8mm映像でとても味わい深く綺麗でした。
まあ神木くんだけではなく、高校生の群像劇となっていますが、部活を真面目にやっている人が、帰宅部のさりげない言葉にカチンと反応するところとか、努力しても報われない厳しい現実とか、大後寿々花の自分でもおかしな理屈こねていると分かっていてもやめられないもどかしさとか、凄く自然でいいんですよね。ちなみに神木くんが惚れた彼女もあとから思えば色々伏線張っていたりしますから、2度見ると余計に楽しいかも。
そして才能はあるけど何事も中途半端なヒロキくんが、とても良かったです。野球の才能があるのに、なぜか面倒で帰宅部に・・・心配して何度も誘う野球部キャプテンのとぼけた味も良かったです。
最後に神木くんと会話があるのですが、才能なくても今が楽しければいいじゃんという当たり前なことを聞いて愕然とするのが可愛い。これでヒロキくんは変われると確信しました。
ちなみにタイトルになっている桐島くんは、ほんの一瞬しか出ていないので要注意。逆に謎のままで終わったのが良かったです。